■ 親友の世界4
【side ゆきみ】
翌日、土曜日。
午前中に、哲也のバイクが音を出して倉庫に向かった。
まだベッドの中、わたしは哲也の温もりを思い出していた。
ここ最近、急激に距離を縮めてくる哲也の真意がわたしには分からなくて。
今までは、わたしのこと結構ほったらかしにしているって感じもしたのに。
青倉庫に行っても、哲也はタカヒロやノリと一緒にVIPにこもっていて。
外でケンチや直人と遊ぶわたしはいつもいつも寂しさを感じていて。
それが今…―――
わたしの事、女扱いってゆうか。
抱きしめたりされるなんて…今までなかったのに。
高校生になった哲也は、中学生の時よりも背が伸びて。
顔つきも大人になって、わたしは置いていかれないように必死でその背中に着いていく。
いつかわたしから離れていくんじゃないか…ってそんな不安を毎日抱えてるなんて誰にも言えやしないけど。
ノリじゃなくて、わたしを見てくれる日は来るんだろうか?
『…ごめんなさいっ…』
えっ?
ガバッと掛け布団から頭を出すと、ベッドの隣側の床に敷いた布団の上、奈々が苦しそうな声を出した。
『やめてっ…助けてっ…』
『奈々っ!奈々っ!大丈夫っ?』
慌ててわたしは枕元に下りて、苦しそうな奈々の肩を緩く叩いた。
『ハッ…わっ…』
大きく目を開けた奈々は乱れた呼吸を整えるように唾を飲み込んだ。
『大丈夫?嫌な夢見た?』
覗き込んだ瞳は涙目でまだちょっと苦しそう。
虚ろな目は誰かに怯えてるようで、わたしは奈々の手を握りしめた。
『大丈夫だよ、ここはわたしの家だから』
どうしてそんな言葉が出たのかは自分でも分からなかったけど、震えを隠す奈々を、怯える奈々を守ってあげたいと思った。
奈々が何を抱えているのか…
タカヒロが奈々をわたしの家に来させた理由なんて、この時のわたしには分かるはずもなく…
そこにある、タカヒロの想いも何も、わたしには分かっていなかった。
誰もが抱えているだろう心の闇は時に大きく強く降り懸かるわけで―――
『大丈夫…』
寝起きの掠れた声で奈々が答えた。