■ 隠し事5
確かに、あたしのジャケットを見た数少ないチームの人達は、無言で道を開けてくれたけど。
若干今も見られている気がするけど…
『でも彼女いるじゃん、たまたまでしょ』
自分でもよく分からないドキドキ感があたしを困惑させている。
『…初めてだよ、ノリ以外がそれを着るのはね』
相変わらずゆきみはニッコリ笑っていて。
何がそんなに嬉しいのかさえもあたしには理解できそうもないよ。
「タカヒロさん総長関係なく男前だからすっげモテるんっすよ!でもまぁノリさんがいるってのもあるんっすけど、誰にも靡かねぇって感じで、寄ってくる女は腐る程いるのに、一途でカッコイイんすよね。だから奈々さんにそれ着させたんなら、ちょっと一波乱ありそうっすね〜」
少し楽しそうな直人くん。
ケンチくんも、ゆきみも何だか楽しそう。
勿論ながらあたしはそんな暗黙のルールを知る訳もなかったから。
やっぱり恥ずかしい。
『べ、べ…別に違うよ』
だからこうやって意味不明な言葉しか出て来ない。
「哲也さんもゆきみさん一筋っすけどね」
直人くんのさりげないフォローの言葉に、ゆきみは笑うのかと思ったけど、何でか笑顔を消した。