■ one2


お昼休みになると今まで寝ていたのがまるで嘘のよう、哲也がムクッと起き上がって学食にパンを買いに行く。

当たり前にわたしは哲也の後を着いて行く訳で。


中学生の時から暴走族チーム【one】に入っている哲也は、この高校でも有名な不良…ヤンキーである。

制服を引きずるように腰で掃いていて、ちゃんと履いていない上履きがカラカラなっている。

誰も哲也にぶつかる人はいない。

先輩すら哲也に絡んだりしない。


「哲也こっち」

「おう」


全てはバックにこの人がついてるから。


金色に近いサラサラの髪と茶色い瞳は何もかもを見透かすようでわたしは直視できない。

暴走族チーム【one】の八代目総長、田崎タカヒロ。

基本的に一般人に手を出すような事は一切しないけれど、この人がキレると誰も手に追えないくらい強い。


――らしい。

だってわたしは見たことがない。

そーいう場所には絶対哲也はわたしを連れて行かないから。


「はい」


四人分のパンをテーブルに置くとそれぞれ手に取った。

タカヒロの隣にはノリ。

タカヒロの女。

相思相愛で、学校でもたまり場でもいつもベタベタしている。

わたしはこの二人が好きじゃない…


「ノリちゃんそれでよかった?」

『うん、大丈夫。後イチゴオーレが欲しい』

「分かった、タカヒロは?」

「俺もイチゴオーレ」


そう言ってノリの髪を撫でるタカヒロ。

哲也はパンを置いて立ち上がると財布を持って自販機へ向かった。

イチゴオーレ二つと自分用のゲータレード…それから当然の如くわたしのミルクティーを持って戻ってきて。


哲也はあんた達のパシリじゃないのに。

わたしも言えないけど。


悔しい、悔しいけど何も出来ない自分が一番悔しい。


なんでだろう。

タカヒロはいつか、哲也を壊しそう…

そんな気がしてならない。

哲也を盾にしないでよ。


でも何より嫌なのは、哲也のノリを見る視線。

ずっと哲也だけを見ているわたしには分かってしまう…


――――哲也の隠れた想い。


ノリは、哲也の想いまで持っていくんだろうか…

嫌なんて言えないくせに、いっちょ前に嫉妬だけは人一倍するわたし…最低だな。

でも切なくノリを見つめる哲也の視線から、わたしは決して目を逸らすことが出来ないんだ。




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