■ 皺寄せ5


「来た。こっちだ直人!」


重たい空気を崩したのはタカヒロで、公園の入口には車が二台。

わたし達が乗ってきたのと、これから哲也達を乗せるのと。

助手席から直人が勢いよく出て来て滑り台に駆け寄った。


「哲也さん、ケンチさんっ、大丈夫っすか?」


直人の声に又少し哲也が笑った。

それでも目に見える傷は痛々しくて、涙が出そうになるのをわたしは必死で堪えてて、車に乗ってからも痛々しい口を開いて、哲也はわたしの膝に頭を乗せたまま助手席に座るタカヒロと会話をしている。

下の奴らのしたことと、その皺寄せと…聞いてるだけでヘドが出そうで、でもわたしは哲也が心地良さそうにするからそっと哲也の髪を撫でる手を止めなかった。


「奈々ちゃんも来る?」


哲也とケンチを車に乗せた後、タカヒロがそう声をかけていた。


『………はい』


そうだ。

違和感があった事に今更気づくわたし。

時計の針はもう24時を回っていて、どうしてこんな時間に奈々は一人で外にいたんだろう?

さっきの質問に表情が曇ったのは、言いづらい事だったから?

まだまだわたしと奈々の隙間は埋まりきらないけれど…

友達として心配する気持ちは大きくて。

奈々はわたしを信用してくれるだろうか?

そんな不安が頭を占領していた。


青倉庫につくともうチームのみんなはポツポツとしかいなかった。

手当てをする為に哲也は裏からバーのVIP部屋に入ったけど、ケンチは入出を許されない。

倉庫の奥のソファーで手当てを受けていた。

ノリはもう、VIPにはいなかった。

そんな事にちょっと安心したわたしには、奈々が何を抱えているかなんて分かるはずもなかったんだ。



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