■ 新ルール6
『タカヒロ』
「どうした」
『あ、うん…』
「あっち行こうぜ」
VIPを指差すタカヒロ。
でも、今行ったらゆきみと哲也くんがいて…
『あっちは行かないほうがいいよ』
そんなあたしの言葉に笑うタカヒロの顔はちょっと黒い。
あたしの耳元に顔を寄せて「邪魔してやろうぜ」って笑った。
『分かってて言ったの?』
「当たり前」
分かったことがある。
タカヒロは意外にも悪戯っ子だってこと。
相手はいつも哲也くん限定だけど。
ノリと一緒にいた頃は、もっとダークなイメージだったから意外だなって思ったけど、本来タカヒロはこーゆう奴だ!って哲也くんが怒りながら言ったのをあたしは忘れない。
あたしの前では素のタカヒロでいてくれるってことが嬉しいんだ。
『絶対哲也くん怒るよー』
「そんときは俺が守ってやるから安心しろよ」
物凄い矛盾を言われて『もーう』ってふざけて怒ろうとしたら、
ほんの一瞬、タカヒロの唇があたしの唇に触れた…
目を開けたあたしに映る、艶やかな笑み。
金色の前髪の下、大きな瞳があたしを捕えて離さない。
薄い唇が綺麗に動いた先に…―――
「先に奈々だ」
そんな言葉を残してあたしはタカヒロの腕に引き寄せられたんだ…
田崎敬浩の女と、土田哲也の女は、チーム全体で守れ。
何があっても守れ。
命はって守りぬけ。
それが絶対のルールだ。
守れねぇー奴はチームの奴だと認めねぇ。
そんなことが配下チームにかせられたらしい。
タカヒロの女と、哲也の女を見にこい。
それが今日の暴走の大きな理由だってあたしが知ったのは、この暴走が終ってからだった…
暴走中もずっとあたしの手を繋いでいてくれたタカヒロの温もりが、これから先もずっと、あたしを温かく照らしてくれているって…――――