■ 新ルール4
わたしごとき女が、あの集団に近づくのはみんなの視線を独占するみたいでどうにも視線を感じて変な気分。
だから小走りでそこまで駆け抜け寄った。
『哲也、ジャケット…』
そう声をかけると、すぐに哲也が輪から抜けてわたしの前に来た。
そうやって会話しているわたし達に、周りのみんながやっぱり視線を飛ばしてくるんだ。
「あー…VIPん中だ。取ってくる」
わたしごとき女の頼みを難無くきく哲也…ってそんな目で見られてるのがすごく嫌で。
『あの、みんな見すぎじゃない?わたしと奈々…そんなに珍しいの?』
隣を一緒に歩きながらそう聞いた。
わたしの言葉に哲也はグルッと身体を反転させて青倉庫を見回した。
それから腕をわたしの肩に回す。
「奈々ちゃんとゆきみのお披露目も兼ねてるからだな。下のチームにはタカヒロの女と、俺の女の顔も覚えて何かあった時は命はって守れって言ってあるからだ」
初めて聞いたその意味に、わたしは嬉しくなる。
『そうなの?』
そう聞いた顔は、絶対に笑っていて。
「あぁ。タカヒロが作った新しいルールだ」
『わたしもチームで守ってくれるの?』
「ゆきみは俺が守る」
そう言って哲也が笑った。
胸の奥がキュンてする。
『…てっちゃん…』
「ん?」
大好きだよ…
哲也の愛情を素直に受け入れることがこんなにも嬉しいことだって、毎日実感できるんだ。
自分の気持ちに余裕があるってだけで他人を受け入れられるなんて、わたしもまだまだ子供だなぁ。
逆を言えば、あの時は気持ちの余裕がなかったってそれだけで哲也の精一杯の気持ちを拒否したあげくに哲也に八つ当たりまがいなことまでして。
でもそれじゃダメだって気づいたから。
分かったから、わたしはこれから先も哲也を受け入れられるってそう思う。
哲也がその愛情をわたしに注いでくれるなら。
何も言わないわたしに「なんだよ?」ってちょっと不機嫌な声が返ってくる。
「思ってることは言えよ」ってそう言われるって分かってるから、わたしは『テレパシー送ったから』そう耳元で囁いた。
「……」
ほんの一瞬考えた哲也は、肩にある腕を腰に落としてわたしをグイッと引き寄せる。
視線が唇に移って…
『てつ、違う!!』
そう言ったわたしの声は、バーの入口が閉まったせいで遮られたんだ。