■ 新ルール3
「こんばんは」
振り返ると知らない顔が数人いて、直人の隣にしゃがみ込んだ。
無言で視線をズラした直人と知り合いなのか、ちょっと馴れ馴れしく見えるのはわたしの気のせいだろうか。
「直人さんの彼女さんですか?」
……ん?
バッチリ視線が合っているのは奈々じゃなくてわたしで。
『え?わたし?』
素っ頓狂な声もわたし発信。
隣で遠慮がちに奈々が肩を竦めて笑っていて、その隣のケンチはすました顔で煙草を吸っている。
「はい、さっきからずっと一緒にいるんで」
タカヒロのネーム入りジャケットを着ている奈々は、誰が見てもタカヒロの女だって分かるけど、わたしは哲也のジャケットなんて着てなくて、直人とは色々あるけど仲良くて…
はたから見たらわたしは直人の女に見えるのかもしれない。
「違げぇ。ゆきみさんは、哲也さんの女だ。間違えてんじゃねぇよ」
テンパるわたしの隣、何とも低い声で直人が質問に答えてくれた。
「そ、そ、そ、そうなんっすか!て、哲也さんの彼女さんだとは思わなくて、すみませんでしたっ」
真っ青な顔でわたしに頭を下げる下っ端くん達。
哲也って聞いただけでそんな怖がらなくてもいいのに。
『あ、いいよ』
『ゆきみも哲也くんのジャケット着たら?』
クスクス笑いながら奈々がそう言うから、わたしは立ち上がってゆっくりと哲也のいる車の方まで歩いて行く。