■ 新ルール2


当たり前に哲也のことしか見ていなかったわたしは、暴走族としてチームに目を向けたことなんてなくて。

今までいかに自分に余裕がなかったかを思い知らされる。

哲也が怪我しないように…

そればかりを祈っていたわたしの暴走履歴に、思い出なんてもんはない。

あるとすれば、哲也が無事だったとかせいぜいそんなもん。


『政権交代かな』

『え?』

『直人もケンチもだいぶ顔がわれてきたよね』

「全然まだだよ」


恥ずかしそうに笑うケンチは、奈々への気持ちを封印できたんだろうか。

奈々を欲しくてたまらない…

そう言ったケンチは、いつもと何も変わらない態度で奈々と接している。

タカヒロが奈々を好きだって事実を受け入れたケンチはすごいと思うんだ。

今までケンチに女の臭いなんてしたことがなくて、奈々と出会って初めてケンチが色気づいたって思ったわけで。

ある意味ケンチの初恋は奈々なんじゃないかって。

そうやって誰かが何処かで傷ついているのかって思うと少し切なくって。

それでもわたしにとって、奈々の幸せには変えられないと思うんだ。

ケンチが傷ついてるのは百も承知だけど、奈々の泣き顔はもう見たくないんだ。



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