■ 前進8
こんな展開、慣れていないあたしは、ただタカヒロに身を任せるだけ。
そんなあたしを優しく深く受け入れてくれるタカヒロ。
タカヒロの過去にいるノリを消すことはできやしないけど、今のタカヒロの心の中には、ノリはいないって、信じる。
身体全部で、あたしだけに愛を注いでくれるタカヒロを、ギュウって抱きしめた。
「奈々…」
『うん?』
「もっと強く…」
『うん…』
強くタカヒロがあたしを求めるから、あたしはこれでもかってくらいにタカヒロの背中に腕を絡めた。
あたしを選んでくれたタカヒロを嬉しいし有難いし、心から感謝したい。
『タカヒロとこうなるなんて、思ってなかったよ』
そう呟いたあたしに、溶けそうなキスをおとすタカヒロ。
それからゆっくりと甘い唇を揺らして、耳元で囁いたんだ。
「俺は、初めて奈々を見た時から、予感してたよ」
胸がいっぱいで、あたしは声にならなかった。
この先、不安が全くないわけじゃないけど、誰だって人を好きになったら不安は付き物なんじゃないかって思うんだ。
あたしを不安にさせない為にタカヒロはきっとずっとこうやって愛情を注ぎ続けてくれるって思う。
だからあたしも、タカヒロを不安にさせない為に、その想いに全身で応えていかなきゃなって。
――――やっぱりあたし達、幸せになる為に出会ったんだね――――