■ 前進6
素肌の哲也に抱きしめられて、どうにも涙が溢れる。
汗ばんだ哲也の身体に指を這わせると「っ…」って哲也が目を細める。
わたしに一々反応してくれる哲也が嬉しくて、わたしも哲也の想いに精一杯答えたいと思う。
抱かれるって行為に興味がなかったわけじゃないけど、わたしはその未知の世界を想像することもなかったわけで。
こうやってわたしの上で見たこともない哲也の表情とか、甘い声とかを聞いているわたしが、わたしじゃない気もしているなんて。
男、哲也は、わたしをどれだけ抱きたかったのか、それが全部今、形になってわたしに注がれている。
全てが初めてのわたしは『痛い』と思うよりも、哲也のそんな顔を見ていたいって、ちょっとした乙女心が芽生えていたのかもしれない。
「ゆきみ俺…」
乱れた呼吸でそう言う哲也の頭をわたしはギュっと抱え込んだんだ。
数秒後に「っくっ…」って甘い吐息が漏れて、哲也がわたしの身体に降りてきた。
大きく全身で呼吸をする哲也に、わたしは今更ながら顔をしかめた。
わたしがこの日絶頂を向かえることは勿論なかったけれど、
ここに辿りつくまでに長い月日を費やしてきたのは、間違っていたようで、間違っていなかったって思うんだ。
お互いどれだけ愛しているのか、痛いほどぶつけ合って今の幸せがあるって。
―――――――わたし達はもう、迷わない。