■ 前進4
その行為に関して一切抵抗を見せないわたしは、言葉で、質問で、聞かれた時だけ否定の返事を返している。
「抱きたい」と思うのなら、そんな風にわたしの意志を確認するみたいな質問はいらないよって。
哲也がわたしを「抱きたい」と思うのなら、わたしだって哲也に『抱かれたい』って、それを哲也に分かってもらいたいんだ。
そんなわたしにもう一度「抱くぞ」って、今度は哲也の意思がわたしに告げられて。
そのまま強引にベッドの上に連れて行かれたんだ。
決定事項を伝えてくれた哲也に『うん』って頷くと、哲也の動きが止まって困惑の表情になる。
「いいのかよ?」
当たり前に困った顔でそう聞く哲也。
でもその質問自体が嫌なわたしは…
『嫌だ』
結局また振り出しに戻ってしまうような答えを告げて。
そう答えるわたしに、哲也の瞳はいっそう「分かんねぇー」っていっていて、それでもわたしを絶対に怒らないにしろ、そうとう苛ついている。
今わたしがしていることは、ノリのしていたこととさほど変わりがない。
思い通りにいかないってだけで、ことごとく哲也に八つ当たりをしている。
わたしに対して「遠慮」の気持ちを抱えた哲也が怒らないって、分かっていながらの八つ当たりでそうとうタチが悪い。
自分でもコントロールのできないこの感情は、きっとそう…ノリと同じ。
ノリもこんな気持ちだったと思うと胸が痛くて。
自分が同じ思いをして初めてその真相に気づくものなのかもしれない。
頭じゃいくら理解したと言っても、事が知れてる。
同じ体験をしてこその、「辛さ」なんだって。
だったらわたしがするべきことは決まっている。