■ 前進3
一度触れ合った唇は、簡単には離れなくて…
哲也がどんなに辛かったのか
こうやってわたしにキスをすることも、本当はずっと我慢していたんだって思わせるくらいに情熱的なキスで…
『ふうっ…』
ズズズズ……
壁に寄りかかりながら床に倒れ込むわたしを、その片腕でしっかりと支えていて…
「―――抱かせて―――」
耳元でそう囁かれた声を聞いて、哲也のいっぱいいっぱいの気持ちを理解した。
―――――でも
首を目一杯横に振るわたしは、顔中涙でぐちゃぐちゃ。
普通に聞いたらズキュンってなるだろう哲也のその台詞さえも嫌で。
そんな問いかけいらないの!
わたしはいつだって哲也しか見てないんだよ。
哲也がそうしたいって思うのなら、わたしだってずっとそうしたい…って思っていた。
怖いだとか、早いだとか、そんなもんどうでもよくなるぐらいに、哲也を離したくないって。
せめて哲也と繋がっていたいって。
そんなわたしの気持ちが少しでも哲也に伝わって欲しいと思っていて。
結局自分の思い通りにならないもどかしさから余計に涙が溢れて、自分が惨めになる。
こんなわたしを、物凄く哀れに思うんだよ―――
「泣くなよ。頼むから言いてぇーことあんなら言ってくれよ」
吐息混じりの溜息は、哲也の今の気持ちそのもので。
『何もない』
そう言ったら又、「たまんない」って感じの顔のまま…哲也の甘いキスが落ちてくる。