■ 情2


「お前――ノリを守り続ける自信はあんのか」


低いタカヒロの声は、当たり前に一真に向けられたもので。


「…―――気持ちがねぇ奴、抱くわけねぇよ―――」


そう言った一真が嘘をついてるとはとうてい思えなくて。

あたしは、一真って人をよく知るわけじゃないし、顔を合わせるのは初めてで。

それでもどこか優しく感じるのは、哲也くんとそっくりだからかもしれなくて。

パーツ以外は全然違う外見だけど、ふとした仕草や声にやっぱり双子を感じる。

この人も、ゆきみを愛する一人なんだと。


『ゆきみへの気持ちは?』


震えるあたしの言葉に視線を飛ばす目は、ドキッとするくらいに鋭くて。

すぐにあたしの前に直人が体を寄せた。

でもそれは、そーゆう意味だったわけじゃないらしくて。


「俺が相手じゃねぇことくらいとっくに分かってる。…目の前にいるこいつをほおっておくことは…できねぇ」


それは、愛になりきれない愛なのかもしれない。

むしろ¨愛¨とは呼べない¨情¨かもしれない。

一真だって、ゆきみへの想いが消えたわけじゃないって。

それでもノリを守るって、そう言ったその言葉を、あたし達は信じようって思わずにはいられない。

一真をそうゆう気持ちにさせたのは、哲也くんであり、ゆきみであり……最終的にはやっぱりノリであって。

いわば、あたし達は一真の誓いを見続ける証人である。


「ノリ」


呼びかけるタカヒロの声はとても優しいけれど、ノリはもう…この声の主に縋ることはできない。

ジッと見つめるタカヒロの瞳は


「幸せになれ」とも

「ごめんな」とも


無言で物語っているようで、それ以上もう二人とも言葉を発することはなかった。

差し出された一真の手を、泣きながら握ったノリの頭に軽く触れて、

そのまま一真がノリを強く抱きしめた―――――



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