■ 涙の意味1
わたしが泣くのはいつだって哲也のこと。
嬉しい時も、悲しい時も、わたしの全ては哲也の為であり
哲也のせいでもある…
大半は、悲しい、切ない、悔しい、辛い…
どうしようもない感情にのせて零れ落ちる涙。
自分の想いとは裏腹な世界を悔やむ涙。
こうであって欲しい!とか。
そういう願望とは全く違う現実が悔しくて、悲しくて。
わたしだけを見て欲しい…と願うわたしの哲也は、それが全てわたしを守る為だったとしてもそんなことは露知らず
当たり前のようにノリの元に行くその後ろ姿に涙が止まらなかった。
そうまでしてノリを助ける哲也の気持ちだってやり切れないだろうし。
そんなことを思う自分が可哀相にさえ思える。
不敏な自分への涙は止まる術を知らずに、どれだけ沢山の人に心配をかけてしまったんだろうか。
…―――そうやって、わたしが泣くのには常に¨哲也¨っていう理由がある。
哲也への気持ちが通じないもどかしさとか、やり切れない想いは抑え切れず、涙の粒となってわたしの瞳を濡らすんだ。
今、目の前で涙を零しているノリは、…どんな気持ちを抱えているんだろうか?
『どうしようもない』って顔で、子供みたいに嗚咽を我慢できずに泣き崩れているノリは、どんな想いをその胸に秘めているんだろうか。
ノリの泣き声に、一真を殴っていた哲也の手が止まったのは事実で。
馬乗り状態の体勢を元に戻して静かにノリを見ている。
それでもノリに優しい言葉の一つでもかけてあげることをしないのは、ノリのしてきたことの重大さを分かっているからで…
それはやっぱり悪いことだって。
ノリの気持ちを考えると…
タカヒロの気持ちが少しずつ離れていくことに恐怖を感じていて、それはいつしか¨奈々¨っていう標的を的にして、奈々を追い詰めることでノリ自身を保っていたのかもしれない。