■ 真実一つ２

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哲也の謝罪はノリに向けられたものだけど、実際はわたしに言っているようにも思える。

わたしがどんな想いをしていたかと思うと…

言われた事実はすごく嬉しいことなのに、どうしても素直に喜べない自分がいる。

それがわたしを想って

わたしを守る為だと言われても…

やりきれない想いがわたしの中に生まれているようで。

嘘で固めるよりも、傷ついてもいいから哲也の愛情を真っ直ぐに感じていたかったと思ってしまうわたしは、おかしいんだろうか。

それが哲也の望む守り方だと言うのなら…

弱いわたしが悪いのかもしれない。

哲也をそうさせたのは、わたしだったんだって。


「でもどう言っても俺はゆきみを俺の枠から外すことが出来ねぇー…結局ノリちゃんを好きだと言った意味もねぇくらい、ゆきみを自分の側に置くことしかできなかった」


ギュッてわたしを強く抱きしめる哲也はやっぱり震えていて。

何をどう答えていいのか、正直分からない。

哲也を想って泣いていた自分が馬鹿だとは思わないけれど…ほんの少し滑稽に思えた。

そんなわたしをよく分かっているんだろう哲也は、わたしの反応を伺っている様子で。

ノリに対してってより、やっぱりわたしの言葉を待っているに違いない。

せめて震える身体を抱きしめ返してあげられたら、哲也は安心できるんだろうか。

何も知らずに勝手に傷ついて泣いていたわたしを、哲也はどう思っていたんだろう。

わたしが泣く度に、それ以上に傷ついていたのは哲也のほうなのかもしれない。

ずっと苦しんでいたのは、わたしも哲也も一緒だったのかも…

そう考えると、哲也が愛おしく思えて…

それでもこの真実を受け止める準備も何もなかったわたしの心は、素直に喜べないなんて。


止まらない涙を哲也の胸元に押し付けると、後頭部に回された腕が更にわたしを強く抱きしめたんだ―――