■ 責任感5
【side ゆきみ】
『奈々ッ!?』
様子がおかしかった奈々は、苦し紛れにケンチを呼ぶとそのまま倒れて、驚いている場合じゃないってわたしは、急いで奈々の所に駆け寄った。
でも、頭の中真っ白で半パニック状態のわたしは、奈々に呼び掛けることしか出来なくて…
『奈々っ!奈々っ!奈々っ!奈々っ!哲也どーしようっ?わかんないっ!!直人っ、ケンチっ!』
振り返った後ろは、どうしていいか分からないって顔の直人とケンチがいて、
タカヒロに関してはただジッとわたしの行動を見ているだけ。
そこに隠れたタカヒロの気持ちを理解する余裕なんか、今のわたしには当たり前にない。
倒れてる奈々は顔面蒼白で、呼吸ができないのか、息を吸うのもままならない。
『やだっ、奈々が死んじゃうっ!やだっ!奈々っ!しっかりしてっ!奈々っ!救急車っ、直人救急車呼んでっ!』
グイッ!
急に後ろに引っ張られたわたしは、お腹に回された哲也の腕に抱えられて、その脇をタカヒロが通り過ぎた。
ジーンズのポケットから取り出された紙袋を奈々の頭にすっぽり被せるタカヒロは、横たわってる奈々を抱き上げて膝をついた自分の太股の上に頭を乗せた。
「奈々、ゆっくりだ…ゆっくり息吸え……」
タカヒロの言葉に合わせるように大きく呼吸を繰り返す奈々…
こんな姿を見るのは初めてで、奈々が抱えてる苦しみは、わたしが思うよりも何倍も深いものなんだって改めて痛感した。
こんな風になるまで気づかなかった自分が情けなくて。
たった四ヶ月程度の付き合いで親友と名乗っていたわたしは、奈々がどれだけ辛かったかなんて、これっぽっちも分かってあげられなかったんだ。
『奈々…』
どうして奈々の幸せを邪魔するの?
やり切れない気持ちは、違う意味でわたしだけに感じたわけじゃなく…
『なんなの…なんでそんなの持ってんの?』
ソファーの上、困惑した声で呟いたのは誰でもない、ノリだった。