■ 責任感2


「俺は……oneを引退する」



度肝抜かれそうなその台詞を、あたしは頭のどこかで予感していた。

そうなるんじゃないかって、思っていた。


――――全てはノリの為に。


『な、に?』


理解出来ないって顔で、ゆきみが小さく聞き返した。


「九代目は、哲也だ」

「………」

「タカヒロさん、そんな急に言われ…

「急にじゃねぇんだ…」


困惑したケンチの言葉を少し遮ったタカヒロの声は、酷く悲しみに満ちた声だった。

その瞳は真っ直ぐにノリを見つめていて、何か大事なことを言おうとしているのが分かる。

ソファーの真ん中に座っているノリは、そんなタカヒロを『意味が分からない』って顔で見ていて、その表情通りに、


『なんで?なんでやめんの?意味わかんない』


みんなが思っている疑問を口にした。


「俺のチームの女が、他のチームの奴と関係があるの分かってて、見過ごすわけにはいかねぇんだ」


それは、哲也くんの双子の兄でもある一真のことを言っているようで。

ノリを¨俺の女¨と呼ばずに、¨俺のチームの女¨と呼んだタカヒロは、それでもあたしに視線を向けてはくれない。

オブラートに包んだその言い方は、簡単に言えば、ノリの相手は一真だって意味で。

タカヒロはこの裏をとる為に単独で動いていたんだって。

…ノリの相手は、タカヒロじゃなかったんだ。

そう思ったあたしは、タカヒロがあたしに嘘はついていないってことが十分に理解できて。

でもだからこそ…ノリの気持ちが分からない。


「お前をそうさせた責任は取るつもりだ。…ノリ、お前が望むのなら」


タカヒロの言葉は、ノリに選択肢すら与えていて、そんな選択肢にノリが飛びつかないわけはないんじゃないかって思っちゃう。

こんな風にノリを守るのは、やっぱりノリを好きで愛しているから?

相手が一真だって分かった上でノリに選ばせるなんて…普通ならできやしないよ。

胸が苦しい…



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