■ 責任感1
【side 奈々】
ずっと考えていた。
タカヒロがいなくなった理由を。
セピアがかった空は果てしなく広大で、そんな空を見上げているだけで自分達がさもちっぽけな存在に思えてくる。
あたし達が生きてる世界なんて、この大きな地球からしたらほんの一瞬の命で。
きっと地球が大きく一度深呼吸し終わった頃には、あたし達はおじいちゃんおばあちゃんになって消えているのかもしれない。
そんなちっぽけな命にもそれぞれ感情があって。
あの日、タカヒロの腕を自分から離したのはあたし。
でも、タカヒロはあの日以来、一度もあたしの前に、ましてや青倉庫に顔を出すことはなかった。
結局タカヒロにとってのあたしって存在はその程度だってこと。
溺れていたのはあたしだけ。
ちょっと優しくされたから、かっこよく守ってくれたから…「好き」って勘違いしちゃったバカなあたしなんだって。
タカヒロにとってのあたしは、ノリの足元にも及ばない、ただの友情ごっこだったんだって。
退屈な毎日にほんの少しだけスパイスが欲しかっただけなんだって。
偶然にもあたしがゆきみと友達になったから、探す手間が省けた…って。
そんな軽い気持ちだったよ、最初から…最後まで。
そう、言われたんだと理解した。
所詮、ノリには敵わない。
ゆきみと哲也くんの話しにしても…
あたしが入り込めない奥深くで繋がってる絆を強く感じてしまった。
男女の付き合い方なんて当たり前に違うけれど…
そこにだって、あたしは入り込めやしない。
ケンチや直人だって過ごしてきた年月が違いすぎる。
あたしなんかがいる世界じゃないんだって。
そんな卑屈な考えばかりが頭を過ぎっていて…
疎外感を感じずにはいられなかった。
だからだと思う―――
タカヒロがどうするのか…
どうすることが一番いいのか…
頭のどこかでそうなるって、自分で分かっていたんだ。