■ キミを守るために5
『奈々〜何の話?』
哲也くんが口を割らないと思ったのか、ゆきみの視線があたしに移ってドキリと心臓が脈打った。
哲也くんは平常心を保っているように見えるけど、あたしの口からゆきみに言うべきことでもないんじゃないかって…
でも教えてあげたい気もして。
…どうしよう?
『えっと、お、お腹空いちゃった、食べたい』
ヘラ〜って笑ったのは完全にごまかしで、哲也くんが微かにあたしに微笑んだ。
『もーズルーイ!いいもんわたしっ、直人んとこいっちゃうもん!』
「させねぇぞ」
すかさずそう突っ込む哲也くんは、冗談のゆきみに対して本気モードで
あたしにはそれが分かった。
あたしが思い描いていた二人は本物で。
早くちゃんとゆきみに伝わって欲しいと思わずにはいられない。
同時に、直人の気持ちを拭ってあげられない現実を悲しく思う。
直人は直人なりにゆきみを愛していて…
ゆきみを守るって使命が愛に代わったなんてロマンチックだけど、それは哲也くんの大きな愛にはとうてい敵わなくて。
哲也くんとうまくいって欲しいと思う気持ちに隠れて、直人を応援したいって気持ちがないわけじゃない。
でも、何より哲也くんの気持ちを知ったあたしは、単純にゆきみを応援する気持ちでいっぱいだった。
ねぇ、タカヒロ…
あたしも素直になったら、タカヒロはもう一度あたしを抱きしめてくれる?
今更もう遅い?
『青倉庫、行こうかな』
そう呟いたあたしの言葉に、ゆきみと哲也くんの笑顔が消えたんだった。