■ キミを守るために4
『…哲也くん?』
「俺が守りてぇのはゆきみただ一人だ…これ以上気持ちに嘘はつけねぇーよ…」
溜息と同時に吐き出した哲也くんの声は、泣きそうなくらい切なかった。
やっぱりそうだった。
どんなにゆきみが疑おうと、あたしには哲也くんがゆきみ以外を好きだとは思えなくて。
そこにこんな一途な気持ちが隠れていたなんて…
「直人を側に置きすぎた」
『えっ?』
てっきり話は終わったと思っていたあたしは、当然ながら素っ頓狂な声を出すわけで。
そんなあたしを微笑ましく見つめるのは、ゆきみの哲也くん。
「俺が側にいれねぇ時は直人がゆきみを守れって。命張ってでも俺の幼馴染を傷つけんじゃねぇ…って命令した」
吃驚した。
そんな約束…っていうか命令?が直人に下されていたなんて…
哲也くんは自嘲的に笑って又、窓の外にゆきみを思い描く。
「そんな命令したから、あいつゆきみに惚れてやがる!…悪りぃけど、幼馴染なんて一度も思ったことねぇのに、そんな風にしかゆきみを守れねぇ俺を、直人が越えるんじゃねぇかってビクビクしてやがる…情けねぇだろ?」
不意に質問をフラれて咄嗟に首を左右に振った。
『そんな風に守ってたんだ、ゆきみを』
「もー限界!(笑)誰にも触らせたくねぇ…」
『何が?』
おぼんにミートソースを乗せたゆきみが笑顔で飛び込んできた。
ガタン!
まるで気づかなかったゆきみの存在に、あたしと哲也くんはビクッと同じように身体を震わせて体勢を崩した。
壁に激突しそうなくらいに驚いている哲也くんが、何だか可笑しく思えた。
喧嘩じゃ敵無しに見える哲也くんの弱点は完全にゆきみなんだって嬉しくなった。
そっか…これだからか。
ゆきみのことに関しては、哲也くんも冷静でいられないんだって…
だからゆきみを隠していたんだってちょっと納得できた気がする。
「何でもねぇよ」
そう言った哲也くんは、柄にもなく照れていて。
意味の分からないって顔のゆきみだけが、不満気にあたし達を交互に見つめている。