■ キミを守るために2
【side 奈々】
『哲也くん…ケンチ元気?』
あの日から、ゆきみも哲也くんもずっとあたしの家に入り浸っている。
絶対にあたしを一人にしないよう…
窓を開けて煙草を吸う哲也くんが、あたしの声に視線を向けた。
キッチンでお昼ご飯を作成中のゆきみの声が聞こえてくるあたしの部屋。
「元気だよ」
分かってる。
哲也くんが青倉庫に行ってないことくらい。
だから、ケンチが元気かどうかなんて本当は分からないって。
それでも気になるんだもん。
あたしに心配かけまいと、そう答えてくれる哲也くんの優しさが身に染みる。
『そっか、よかった』
こんなあたし、やっぱりケンチには知られたくなくって。
「…ケンチに会いてぇの?」
ちょっと口端に笑みを浮かべる哲也くんは、ゆきみの哲也くん。
ずっとゆきみを守ってるゆきみの哲也くん。
『会いたいなんて、あたしにはそんなこと言う資格ないよ』
あたしが出したのは自嘲的な笑いで、哲也くんの目がほんの少し細くなった。
「そんなことねぇよ、呼ぼうか?」
携帯をヒラヒラさせて優しく哲也くんが微笑んだ。
あたしはベッドに寄り掛かったまま首を横に振った。
逢いたいと願うのは、いつだってタカヒロで。
あたしを置いて何してるの?
あたしが手放したのは百も承知だけど、それでも想いだけはタカヒロにすがってばかりのあたし。
ゆきみの哲也くんは、あたしが話しかけない限りは無駄に話したりしなくて。
ずっと、ゆきみ以外の女の人には自分から話しかけることはないって、その感じが愛情たっぷりで、あたしはそれを嬉しくも羨ましくも感じるんだ。
『哲也くんは、ゆきみのどこが好き?』
いきなり話題を変えたあたしに、その話題がくると思ってなかったって顔の哲也くんが吃驚した顔を浮かべてあたしを見た。
「えっ?」
というか、聞こえてなかったみたい?
だからもう一度同じ質問を繰り返したあたし。