■ リスク6
【side 奈々】
ゆきみとの電話が切れて3分もしない内に直人から電話がかかってきた。
『直人…』
あたしは涙を堪えることも、嗚咽を隠すこともしない。
できない。
「奈々さん、俺ね…」
直人はあたしが泣いているのも、独りなのも分かっているみたいで。
それでもそのことには一切触れずにいる。
自分がoneに入るきっかけになったことや、学校でのケンチのこととか全然聞いていないのに話していて…
でもそれがかえってあたしの心を落ち着かせてくれた。
今、タカヒロとのことを色々聞かれた所で、何一つ答えられるものなんてない。
たったの15分程度だったけど、直人はあたしをほんの一時、タカヒロへの苦しい想いから解放してくれたんだ。
でも、マンションの下にバイク音が聞こえたあたしは感情が高ぶって…
バイク音は、携帯越しに直人の耳にも入ってるかもしれない。
哲也くんのバイク音が止まると、数分後にあたしの家のドアが開いて…
『奈々ッ』
ゆきみが真っ先にあたしを抱きしめた。
同時にカランッて携帯がベッドの下に落ちた。
それまで止まっていた涙が一気に溢れ出てきて…
ゆきみの温もりが温かくて。
タカヒロと同じその温もりに、あたしはギュっとゆきみにしがみついたんだ。