■ 崩壊4
「ゆきみ」
ドキッ…
顔をあげて振り返ると、バーの入口に哲也が立ってた。
その顔からは、今のわたしには何も読めなくて…怒っているとも怒っていないとも取れる…
『ノ、ノリは?』
「帰した。お前に大事な話がある」
まさか、こんなにも早く哲也が戻ってくるなんて思いもしなかったわたしは、心の準備もなにもできていない。
真剣に見つめる哲也の瞳は、怖いくらいでわたしはチラッと直人を見つめた。
でも、しっかりとわたしを見ていてくれた直人が、わたしにかける言葉なんて何もなく…
連行するみたいにわたしをバーから連れ出す哲也。
心臓はドキドキバクバクで、何ともいえない緊張感がわたしを取り巻く。
バタン…て大きな音をたててドアの閉まったVIP部屋に二人きりになった瞬間、哲也がわたしをギュッと抱きしめた。
「好きだ」
たった一言、わたしが待ち望んでいた言葉が耳元に届いたんだ。