■ 崩壊2


『バー行こ!喉渇いちゃった』


直人の背中を押して、わたし達は青倉庫の地下バーに移動した。


『マスターライチちょうだい!直人はビール?』


わたしの言葉にニッコリ頷く直人。

マスターはわたし達oneの6代目総長の時の特攻で、引退してからずっとここのバーにいる。


「ゆきみちゃん、タカヒロは?」


え?…

視線を飛ばすマスターはちょっと困った感じで、何かを迷っているようにも見えるけど…


『分かんない』


完全な嘘をついた。

せっかくタカヒロをノリから解放したっていうのに、そう簡単にタカヒロの居場所を教えられるわけがない。

例えマスターといえど!


「そう。ノリちゃんとか哲也とかは?」


そんなわたしに追い撃ちをかけるマスターは、何かを隠しているように見えなくもないけど。

何を探っているのかなんて分からない。


『ノリ体調悪いみたいで…哲也が病院連れてった』

「そう」


でも、マスターはそれ以上何も言わない。

その瞳からわたしがマスターの気持ちを読めるわけなく。

哲也の気持ちすら読めないのに、ましてやマスターの気持ちを読めるわけがない。


「…風邪?」

『え、うん』

「そう」


さっきから意味深なマスターは、やっぱり何を言いたいか分からなくて、わたしは直人に視線を戻した。

そんな直人はわたしより¨?¨って顔をしていて。

わたしより年下のくせにビールを飲みながら煙草を吸っていて…

何だかちょっと大人っぽく見える。


『ね〜夏休みの宿題、終わった?』

「やってねぇ…」

『だよね。直人って頭いいの?ケンチって黒髪だから一見優等生に見えない?』

「バカっすよ自分。ケンチさんって真っ直ぐなんでイジメとか助けちゃうっつーか、倒しちゃう?…んで自分らの学校ではやっぱり一目おかれてます」


ケンチを思い描いているだろう直人の隣、外から帰ってきたケンチがカタンとカウンターに座った。



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