■ 束縛3


【side ゆきみ】




『タカヒロいる?』


青倉庫に着いたわたしは、外にいたケンチに声をかけた。


「あ〜うん、いるけど…入ってくんなって……ちょ、待てってゆきみちゃんっ!」


ケンチの忠告を無視してVIP部屋と続くバーの方へ歩くわたしは、グイッて強くケンチに腕を引っ張られて足を止めた。


「奈々は?」


その瞳はただ心配そうで。

奈々がここに来ないことに、ケンチは少なからず心配なわけで。

でも、奈々の現状を言うこともできない。

万が一、誰かの耳に入って、無駄に奈々が傷つくようなことは避けたい。

わたしだって奈々のこと、守ってあげたい。

あんなに辛い姿、もう見たくないよ。


『うん大丈夫そう。でもまだ熱あるから…もう少し待って』

「そっか…分かった…」


ケンチには、インフルエンザって言ってある。

信頼度の高いケンチになら言っても大丈夫かなとも思うけど、やっぱり言えなくて。

それは、タカヒロが奈々を隠しているからでもあるんだ。


バーを通過してVIPまで歩いた。

このドアの向こうにタカヒロがいる。

わたしは、ダメと分かっていながらそのドアを開けた。

中はシーンとしていて、ソファーに座るノリとタカヒロが同時にわたしを振り返った。


『ノリ、具合どう?』


悪びれた感じも出さずにそう言うわたしに、二人とも怒りはしない。


『よくないよ』

『そっか。検査は?』

『まだだけど…』

『わたしが一緒に行くよ』


そう言うと、わたしをほんの少し睨むノリ。

それからゆっくりと口を開いて…


『じゃあ哲也がいい、哲也のほうが話が早い』


そうやってノリはわたしを苦しめる言葉を簡単に口にするんだ。

相手が哲也だったのなら?ノリは一体どうするつもりなんだろうか。

…―――わたしはどうするんだろう?


『……うん……分かった』



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