■ 束縛2


『そっか』

『うん』


直人があたしを起こしてくれて、ゆきみがお粥を食べさせてくれる。

玉子が入ったお粥は、ちょっとだけ切れた口内に染みて顔を歪めた。


『痛い?』

『大丈夫、直人すごい美味しいよ、ありがとう』

「よかったです」


こんなにあたしを大事にしてくれるのに、タカヒロがいないってだけでどうしても元気が出なくて。

ゆきみも直人も絶対にそんなあたしを分かっているはずだけど、何も言わないのは…

タカヒロの状況を知っているからなんじゃないかって。

それを言わないってことは、あたしには聞かれちゃいけないって意味で…

ノリはタカヒロとあたしを認めてくれなくて、やっぱりタカヒロは監禁されているんじゃないかって思っちゃう。


『奈々〜わたしちょっと荷物取ってくるね』

『うん。…直人も行っちゃうの?』

「自分はいますよ」


あたしの問いかけに、ニッコリ笑顔をくれる直人にホッとした。

今までは一人でいることなんて何ともなかったのに、むしろそれが自然だったのに、いつの間にかあたしはこんなにも弱くなってしまったんだろうか。

ゆきみにも、タカヒロにも、側にいて欲しいって思うあたし。

優しさを知ってしまった人間は誰しも弱くなってしまうもの?


『直人、ごめんね…引き止めて』


ゆきみを見送る心配そうな直人にそう言ったら、振り返って首を横に振った。


「奈々さんも、自分にとっては大事な人です!」

『直人は優しいねぇ』


あたしの言葉に恥ずかしそうに直人が笑ったんだ。



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