■ おいてきぼり5
【side 奈々】
カチカチカチカチ…
夜中の3時を越えてもタカヒロは来なくて…
親父も運よく今んとこ帰って来てなかった。
ただ、時間だけが過ぎていく。
バイク音が聞こえないだけでこんなにも不安になるなんて。
ノリと何かあったのかな?
ノリの事だから、そう簡単に許してくれないのかも。
まさか、監禁?!
…さすがにそれはないか。
でもこうやって一人で待っているのはあたしで…
あたしがノリの立場だったならば、どうするんだろうか。
相思相愛と言われていたあの二人。
いつでもどんな時でも一緒で、誰もが認めるカップルだって言われている二人が、たかがあたしの気持ちだけで崩せるんだろうか。
あんなに近くにいる哲也くんだって入り込めやしないのに。
もしかして、やっぱりノリが好きってタカヒロはそう思ったのかな?
あたしへの気持ちは間違いでした、とか…?
最初からそんなつもりじゃなかった?
考えれば考えるほど不安は大きくなっていて、今タカヒロがここにいないって現実が受け止めがたい。
今まで一度だって、あたしの所に来なかったことなんかなくって。
あたしがケンチの所に行っていた時だって、タカヒロはあたしの家族さえも守ってくれていた。
二人きりの時はいつだって「甘えていいぞ」ってあたしを抱きしめてくれていたのに。
どうして、こないの?
呼吸が苦しくて…涙が出る。
カチャッ…って音が聞こえて部屋のドアを開けたあたしの目の前に立っていたのは、
久々に見る親父で…
タカヒロの存在がないことに、あたしを見て気持ち悪い笑みを見せた。
――――――――――――…
『ううっ…』
身体が痛くて、呼吸もままならなくて…
どうしようもなくて…
部屋の隅に倒れたままあたしはタカヒロの携帯に電話をかけた。