■ 寂しい赤い糸6
ノリの言った言葉が頭にないわけじゃない。
だからといって、ノリの言葉を100%信じているわけでもない。
真実味があるのかも分からないその言葉を、わたしはただフワフワ抱えているだけだった。
「連れてってやる」
そう言って微笑む哲也。
この笑顔を独り占めできたら、わたしは何もいらないのに。
いつになったら、わたしだけの哲也になるんだろうか。
いつになっても無理な気がする。
「どうした」
『へ?』
「俺を信用できねぇ?」
ドキッてした…
見透かすような哲也の視線に、わたしは答える言葉も見つけられない。
ノリのあの言葉を聞いてしまったから?
ノリはわたしをどうしたいんだろう?
哲也は自分の物だって、わたしに分からせたいの?
気持ちが追いつかなくて涙が出る。
「ゆきみ…」
困惑しながらも伸びてくる哲也の腕は、こんなにも優しくて温かいのにね。
お願い哲也…
わたしを助けてよ。
こんな気持ち苦しいよ。
ただ哲也が好きなだけなのに…
哲也と一緒にいたいだけなのに。
そんなことも許されないんだろうか…。
いつになったらこのモヤがとれるんだろうか。
抱きしめてくれるこの温もりはこんなにも温かいというのに、わたしの心は氷みたいに冷たいんだ。