■ 寂しい赤い糸3


『ノリ、どうしたの?』


完全にビビッているわたしの声は、残念なくらいに震えていて…

不意にわたしの腕をノリが掴んだんだ。

心臓がドクンっと鳴って…















『…生理こないの…あたし…』



聞き流そうにもハッキリそう言った。



ちょっと困ったようなその声色に

わたしの脳内は真っ白になりかけている。

これは、うそ?ほんと?


『…タカヒロ知ってんの?』


それでもそう聞いたわたしに届いたのは

苦しくも悲しいノリの言葉だった。

















『タカヒロじゃないかもしれない…哲也かも………』





そんなの嘘だ!って分かる。

絶対嘘だ!!って…

分かっているのに、悔しくてわたしは必死で涙を堪えた。

今ここでノリの前で泣いたら負けな気がする。

倒れそうな足を踏ん張って地面につける。

潤みそうな瞳に力を込めてしっかりとノリを見つめる。

見つめた先のノリは、わたしをただジッと見ているだけで。

薄い唇を開くと、綺麗な声でわたしに言うんだ。


『まだ誰にも言わないで…また連絡する』


ノリの言葉に『うん』とか『すん』とか返したのかは定かじゃなくて…

わたしはただ呆然としていた。



哲也がノリを好きなことは百も承知なのに…

全然受け入れてなかった。

そんな事実があったかなんてそれこそ疑う術もなくて。

ここまでして哲也を想っている自分が滑稽に思えて仕方ない。


結局ノリがそんなこと言うのは、そんな事実があるからで…

哲也がわたしを抱きしめたことも

わたしにしたキスも…

全部が嘘だったなんて。

ノリとそんなことまでしといて、わたしを繋ぎ止めておく哲也の意図すら…分からないんだ。



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