■ 星に願いを4


「奈々ちゃん、ありがとうな」

『えっ?』


感動しているゆきみと反対側、あたしの耳元に小さく呟くのは、ゆきみの哲也くん。

お礼を言われることは何もしていないはずなんだけど、優しさを帯びたその声にあたしは顔を哲也くんの方に向けた。


「あいつと友達になってくれて」

『ゆきみと?』

「あぁ」

『そんなの、あたしの方が』

「でも、俺は感謝してる、マジで。…俺なんかと一緒にいたから友達なんていなかったし。奈々ちゃんがゆきみのこと構ってくれてることに、俺安心してる。だから、これからもゆきみと仲良くしてやってな」


クシャって哲也くんの手が、一度だけあたしの髪を撫でた。

哲也くんの優しさに、その大きな愛に、あたしはス―っと頬を涙が伝う。

そんなこと、あたしの方が『ありがとう』なのに。

ゆきみの存在が今のあたしにとってどれだけ大きいかなんて。

この無数に見える星だって、その想いには叶わないんだって思えるほど。



どうか、お願い…


これ以上あたし達の幸せを壊さないで…


そう星に願うんだ。





――――第一章*完――――





- 142 -

prev / next

[TOP]