■ 星に願いを4
「奈々ちゃん、ありがとうな」
『えっ?』
感動しているゆきみと反対側、あたしの耳元に小さく呟くのは、ゆきみの哲也くん。
お礼を言われることは何もしていないはずなんだけど、優しさを帯びたその声にあたしは顔を哲也くんの方に向けた。
「あいつと友達になってくれて」
『ゆきみと?』
「あぁ」
『そんなの、あたしの方が』
「でも、俺は感謝してる、マジで。…俺なんかと一緒にいたから友達なんていなかったし。奈々ちゃんがゆきみのこと構ってくれてることに、俺安心してる。だから、これからもゆきみと仲良くしてやってな」
クシャって哲也くんの手が、一度だけあたしの髪を撫でた。
哲也くんの優しさに、その大きな愛に、あたしはス―っと頬を涙が伝う。
そんなこと、あたしの方が『ありがとう』なのに。
ゆきみの存在が今のあたしにとってどれだけ大きいかなんて。
この無数に見える星だって、その想いには叶わないんだって思えるほど。
どうか、お願い…
これ以上あたし達の幸せを壊さないで…
そう星に願うんだ。
――――第一章*完――――