■ 星に願いを2
【side ゆきみ】
ほんの一時
ほんの一瞬
それが今のわたし達を照らしている
――――――――――――――――
『奈々待ってよ―』
『こっちこっち、ゆきみ早く』
バイクだと大変だからってわざわざ迎えの車を来させたタカヒロは、奈々とわたしが見たがっていた星を見るまで帰らないってみんなに宣言してくれた。
ずっと寝ていなかった直人とケンチは、奈々のおばあちゃんの家で死んだように眠っていて、わたしと奈々は、哲也とタカヒロを引き連れて海で遊びまくったんだ。
それは本当に、楽しい一時で。
わたし達の住む地元じゃこんな緑の多い景色はおろか、海なんてないからわたしははしゃぎまくった。
哲也もタカヒロも、勿論奈々も、そんなわたしに便乗してくれるみたいに、はしゃいでくれて。
まるでそれは、これから起きることから目を逸らすかのよう…
『本当にカニいたんだってば〜』
『見せてくれなきゃ証拠になりませーん』
奈々にそう言われてわたしはブスっと頬を膨らませた。
大きな岩の隙間に見つけたカニさん。
でもどうしても手づかみができなくて、わたしはミスミスそのカニを逃がしてしまったわけで。
田舎育ちの奈々は綺麗な顔してんのに、全然お構い無しで色んな生物を手づかみしていて、わたしはことごとく逃げていた。
『タカヒロ〜、奈々はあんな綺麗なのに、結構グロイもの捕まえちゃってるけど、それでもいいの?』
ちょっと悔しくてそう言ってやったら、奈々が音でも立てるみたいに真っ赤になった。
言われたタカヒロは何てことない!って顔でわたしに視線を飛ばす。
「俺より強いんじゃねぇーお前」
ポスってタカヒロの手が愛しさを込めて、奈々の髪を撫ぜた。
奈々の隣で、哲也がそっぽ向いて吹き出した。
タカヒロの意見に同感って顔で。
『哲也くんまで笑う?』
「いや、悪い…俺笑ってねぇ」
そう言いながらも顔を逸らしている哲也は、わたしから見たらしっかりと笑っていて。
そんな哲也に奈々もブスっと頬を膨らませた。
『いいよ、もう』
「ハハッ、ごめんな」
そう言って哲也が奈々の頭に触れた。
そんな光景を見ていたわたしは、やっぱり頬が緩んでしまって。
こうやって哲也がわたし以外の女に触れることなんて滅多になくて。
奈々のことちゃんと認めてるって態度に出してくれるんだって。
そんな奈々も少し照れくさそうな笑みを浮かべていて。
このままずっとここにいられたらいいのに、って思わずにはいられないんだ。