■ 奪略宣言2


【side ゆきみ】




『そういえば、みんな昨日は奈々の所に泊まったの?』


奈々に会う前に意識を飛ばしてしまったわたしは気づいたら朝で、哲也だけが同じ部屋にいた。

今ここには直人とケンチもいる。

もうすぐ迎えの車が来るみたいで。

わたしはシャワーを借りて奈々の部屋で寛いでいた。

奈々のおばさんはしばらくここに残るみたいで、奈々だけ帰る準備をしている。


『え?うん…』


わたしの質問に振り返った奈々は何だか顔が赤くて。

その反応に、キョトンと奈々を見つめたわたしは不意に浮かび上がった。


『え、もしかして奈々、タカヒロと…』

『…な、何言ってんのっゆきみ、違うからっ…』


そう言う奈々が言い訳っぽく聞こえて、わたしはもう何も言わなかった。

奈々が幸せならそれでいい。

でもつい口元が緩んでしまう。

真っ赤になる奈々が可愛くて愛しくて…


『ノリのこと、なんか言われた?』

『…何も。あたしが好きだから、あたしがタカヒロを好きなだけだから…』


それはまるで、わたしと同じ。

わたしが哲也を好きな気持ちと同じなんだってほんの少し切なくて。


『わたし、奈々を悲しませる奴は、許さないから!!』


冗談半分で言ったその言葉に、過剰に反応した奈々の心に、ほんの少しケンチが出入りしていることをわたしは知らない。


「ゆきみ」


コンコンってノック音がして、哲也がわたしを呼んだ。

扉を開けると、哲也もシャワーを借りたのか、いつもは持ち上げられてる短髪がシナっと落ちていて…

それだけでちょっとだけドキッとする。


「荷物貸せ」

『あ、うん』


特にない小さな荷物を哲也に渡すと、わたしの頬に手を添える。

どうしてか、ブスッ面の哲也は不機嫌丸だしなのにわたしを離そうとしなくて…



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