■ 執着の理由3


【side 奈々】




『そんな告白…聞きたくなかったよ…奈々…』


いつの間にかテーブルに手をついて俯いていたゆきみの瞳から、ポロポロ涙が零れ落ちていて…

あたしは震えるゆきみの手を握りしめたんだ。


『いつかノリに哲也を取られるんじゃないかって…必死でしがみついてるけど、わたしの想いなんてちっぽけで…ノリの言葉一つで哲也はノリの方にいっちゃうんじゃないかって…いつも不安で、怖くて……』



ポロポロとあたしの腕を濡らしていくゆきみの涙。

思い描いていたものよりも全然深かったゆきみ達の世界を、あたしは初めて知った気がしたんだ。

第三者のあたしがゆきみに何を言えるんだろうか。

でも、ゆきみに伝えたいことは沢山で。

小さく深呼吸をしたあたしは、さっきのゆきみみたいにしっかりとゆきみを見つめた。


『それでも哲也くんはゆきみを好きだと思う。あたしには、ノリじゃなくて、ゆきみだけを好きにしか見えないよ』


そう言ったら拍子抜けしたような顔のゆきみと目が合った。

あたしの言葉に又泣き出すゆきみ。

こんなにも哲也くんを好きなゆきみ。

哲也くんに伝わって欲しいと願わずにはいられない。


『ごめんねっ、先にこんなこと言ったらっ奈々の…気持ちっ……』


言葉が涙で呑まれて…

でもゆきみが何を思って、何を言いたいのかが、あたしにはよく分かった。

実際、タカヒロも哲也くんをも独占しているノリ。

ゆきみが哲也くんを独占したならば、ノリの想いを受け止めるのはタカヒロだけであって。

あたしがタカヒロに向ける気持ちは邪魔なだけだって。

でもゆきみは、そんなことが言いたいわけじゃないって。

だからあたしはゆきみの背中を撫でながら少し微笑んだ。


『うん、分かってる……』


そう言ったら、真っ赤な目であたしに視線を向けて。



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