■ お前じゃなきゃ…1
【side 奈々】
逢いたいと願ったら
抱きしめてと願ったら
あなたは叶えてくれる…?
―――――――――――…
ゆきみに電話をかけた。
タカヒロの私物…
「お守り」にしているタカヒロのジャケット。
初めて青倉庫に連れて行って貰ったあの日にタカヒロがあたしに渡してくれたもので。
それを返そうとしたら「持ってろ」って一言。
そこに込められた意味を思うと、胸が熱くなる。
その薄手のジャケットを着込んで腕まくりをすると、あたしは又静かに身を潜めた。
遠くでバイク音が鳴り響いている。
大きな不安に押し潰されないように必死で冷静を保とうとするけど、近づくバイク音と近づく足音にあたしは抱えた膝に顔を埋めた。
タカヒロ…タカヒロ…タカヒロ…タカヒロ……
祈るように頭の中で何度もタカヒロを呼ぶも、通じる訳もなく…
震える指でタカヒロの携帯に着信をかけようとした時だった。
ピカーッ!!
見つかった!!
ライトで照らされたあたしに近づく足音。
「いたぞっ!!」
誰かの一声に沢山の足音が重なって近づいてくる。
怖くて声なんか出せないあたしは、ゆきみやケンチが側にいなきゃ何も出来ないんだって実感する。
「あの…奈々さんっすよね?」
不意に聞こえた声に顔をあげると、見かけは完全にoneの面子と代わり映えのない男の子の集団があたしを囲んでいる。
でも、一定の距離を保っていて決して無理に近づいてはこなくて。
『…え、あの…』
困惑するあたしのジャケットを指差して「それ…」そう言われて。
『タカヒロの…』
「あぁ…やっぱり!!おいっ、ケンチさんに電話しろっ」
リーダー格っぽい茶髪の男の子がそう言うと、後ろにいた黒髪の男の子が携帯をかけた。
「見つけました、間違いないと思います…」
電話はまだ続いていて。
『あの、なんで?』
「俺らoneの配下にいるチーム【seven】ていいます!地元は仙台なんすけど、この前久々に配下集合かかりまして、ずっと奈々さんのこと探してました。タカヒロさんの命令で」
『いつ?』
「えっ?」
『いつ命令が出たのっ?』
思わず声を張り上げたあたしの心臓はバクバクしている。