■ 捜索5
「ああ、こいつら…っつーか、配下集合かけて!奈々の存在あかして絶対捜し出せって。掴まえたら指一本触れんじゃねーってな」
『ええっ!?直人は?』
だって直人はわたしを守ろうと、一人で戦う気だったもの。
「直人はゆきみちゃんだけを張ってたから知らねーかもな?」
何ともお気楽な返事が返ってきて…
「ゆきみちゃんを一真の所に行かせたこと…それに対して哲也さん尋常じゃねーくらい怒ってたから、わざと教えなかったんじゃねーかな?」
『そ、そんな…』
「それよかゆきみちゃん、痩せたな…飯食わねーとダメじゃん!!…クマもすっげーよ?寝てねーだろ」
わたしの目じりにちょっとだけ触れて真剣な顔でケンチがそう言うから、自分の体調が最悪な事に今更ながら気づいた。
『うん』
「しんどかったな」
『…ん』
「心配したよ」
『ん』
「戻っておいで」
声にならなくて、ただ小さく頷いたらケンチの手がわたしの頭に軽く触れて、優しく撫でられて…
「みんなの声代表のケンチでした!なんつってな」
そう笑ったんだ。
ケンチの笑顔に、哲也が側にいるってことに安心したんだ。
一気に身体が重くなって極度の睡魔に襲われたわたしは、薄れゆく意識の中…
「奈々ッ!」
そう叫ぶタカヒロの声と
『タカヒロォッ――!』
それに応える奈々の涙声を遠くで聞いた気がした。
何ともいえない幸せな気分で目を閉じたんだ。