■ 捜索2


【side ゆきみ】



走りはじめてどのくらいの時間が経っただろう?

直人はこの運転技術をどこで知ったんだろうか?

ヘルメットを装着した直人は、本気の走りで奈々の元へわたしを届けてくれる気だろう。

一度も休憩せずにわたしと直人は福島市内に入った。


「ゆきみさん、奈々さんに電話を」


走りはじめてからようやくバイクを止めて直人がわたしにそう言った。


『うん…』


そう言ってバイクに跨がったまま携帯を取り出して奈々に電話をかける。

直人はふう〜って小さく溜息をついて煙草を咥えた。


『直人寝てないんでしょ?大丈夫?』


どっから見ても疲れきった顔の直人にそう言うと優しい笑みが降ってきて、直人の腕をギュッて掴むわたしの手を上から握りしめた。


「充電中」


そう笑う直人はどう見たって顔色が悪い。

ここまで走るも相当の体力がいるっていうのに、二日も寝てないと限界なんじゃないかって。

直人に頼るしかない自分が情けなくも感じて。

哲也に逢いたい…と思うことすら悪いと思った。


『出ないな…』


耳元の携帯からはプルルルル〜って音がエンドレスに流れていて、いっこうに奈々の声に届かない。


『直人どうしよ、奈々出ない』


頭に過ぎる最悪な事態。

考えたくないのに浮かび上がるのは奈々の悲惨な姿で、直人の片手がわたしの腰に回ると同時に直人の温もりに包まれた。


「大丈夫です!自分が保証します」


そう言ったらピカンッてライトに照らされて、一瞬で直人の目つきが変わった。

煙草を踏み潰してわたしを隠すようにライトを睨みつける直人。

静止していたわたし達はあっという間に囲まれた。

音を奏でる何台ものバイクが、わたしと直人をガンつけている。


…もうわたし達、ダメなのかな?

このまま奈々に会えないままわたし、こいつ等にヤラれちゃうのかな。

哲也…



「ゆきみさんはここにいて下さい」


耳元で直人がそう言って、バイクの横に着いている金属の小さい棒を握りしめた。


「俺絶対守るから…死んでもゆきみさんを傷つけないから」


振り返って笑った直人は一人で輪の中へと飛び込んで行った。


行かないで直人…

死なないで直人…

直人までわたしを置いて行かないで…

一人にしないで…

わたしの直人…




- 122 -

prev / next

[TOP]