■ 離れ離れ7


「悪りぃ、ここ…バレたかもしんねぇ」

『え?哲也に?』

「いや、つーか直人だっけ?あいつ毎日俺のこと付け回して…巻いたと思ってたんだけど…」


そう言って口ごもった一真は窓の外に視線を移す。


「二日も居座りやがって」


チッて舌打ちをすると、カーテンを締め切った。

あの日、一真のところにわたしを連れてきてくれた直人は、そのことを哲也達に言ったのかは分からない。

何も言わずにわたしをずっと守ってくれているのかもしれない。

でも、わたしが家に帰らないことなんて、哲也の耳には簡単に入るわけで。

一真がわたしを隠していると分かっていながらも、直人はわたしが出てくるのを一人待ってくれているんだって。

今ここで、わたしが顔を出したら直人は間違いなく乗り込んでくる。

たった一人でも、負けると分かっていても、直人はわたしを取り返そうと挑んでくるはず。

そんなこと、絶対にさせらんない!

のに…


一目直人に会いたいと思う自分がいて…

哲也の元に連れて行って貰いたい…って気持ちが消えない。

でもこの家は先輩の彼氏もいるし、その仲間も出入りしていて…

正直直人に勝ち目はないしむしろ、無防備にいる直人の方が危険。


『一真…』


そう呼ぶのとほぼ同時、


「とにかくゆきみは一歩も外に出るんじゃねぇぞ」


一真が遮った言葉に何も答えられないわたし。


『でも直人に何かあったら』

「てめぇで勝つまでだ」


冷たい一真の声がわたしに届いた。



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