■ 離れ離れ5
【side ゆきみ】
「ゆきみ、入るぞ」
コンコンてノック音がしたと同時、一真が部屋に入ってきた。
チームZEROは、全力でわたしの存在を隠していた。
一真の所に来てから一週間。
一真がお世話になってる先輩のツテで、元走りやをしていた人の家に転がりこんでいた。
とってもいい人で、すごく親切にしてくれる。
毎日一真はわたしの顔を見に来てくれた。
『あ、一真お帰り!』
わたしの顔を見る一真は不機嫌で。
隣にいる先輩に視線をズラすと首を横に振る先輩。
それが何を意味しているか勿論分かってる。
「ゆきみ、頼むから食ってくれよ」
一真はりんごを手にしていて、それをわたしに差し出してくる。
わたしは首を振ってそれを拒否した。
「一週間も何も食ってねぇじゃねぇか…」
『大丈夫』
強い視線を向けると溜息をつく一真。
「大丈夫じゃねぇから言ってんだよ」
哲也にそっくりなその顔で、その声でわたしを心配する一真。
今のわたしには少しキツイ。
でも、わたしの重い気持ちが、奈々を苦しめることになるのはもう勘弁。
わたしの為にと思うなら、戻ってきてほしい。
『奈々は見つかったの?』
「…いや」
『そう』
奈々…どこにいるの?