■ 離れ離れ4


【side 奈々】



ケンチの家を出てから一週間。

夏休み中だったから学校に行かなくてすんだのが唯一の救いだった。

チームみんなに迷惑をかけたあたしは、自分がいなくなることで更に迷惑をかけると分かっていながらも、家から離れることを決めた。

お母さんと一緒におばあちゃんの家がある田舎に来ていた。

ゆきみと出会って、タカヒロを好きになって過ごしたあの一時が、まるで嘘みたいにここは静かで…

親父に怯えることもなくて、平和な時を過ごしている。



でも…


心は痛くて、ゆきみに…タカヒロに逢いたいと願っている。

あたしを探しているかもしれない。

ケンチ、タカヒロに怒られてるよね?

タカヒロ元気にしてるかな?

タカヒロ…逢いたいよ…

たった三ヶ月…

ほんの三ヶ月たらずだったけど、タカヒロの存在はあたしを確かに生かしてくれていた。


『タカヒロくん、奈々がいなくてもちゃんと一晩居てくれたのよ…同じように朝ご飯食べて帰って行ってね。大切にしなさいよ』


お母さんに聞いた現実に涙が出そうで、それでも自分を抑える為に帰れなかった。

タカヒロがいたら、独り占めしたくなるから。

ノリの所に帰したくなくなるから。

これ以上好きになっちゃいけないって、苦しいだけだって。

会わなければその想いは消えてくれるかな…

そんなあたしの願いは少しも叶ってくれなくて、

何をしてても、何処にいても、タカヒロを想っているんだ。



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