■ 決意5
こんな時に何してるの?とか、そんな気持ちになんかならなくて。
わたしがしようとしていることを、哲也は分かっているに違いない。
わたしの考えが読まれてるとしか思えなくて。
こうやってキスしてくれるのは、少しはわたしのこと想ってくれてるってこと?
少しぐらいは、わたしを離したくないって気持ちがあるってこと?
そこに喜びを感じてしまうわたしは、哲也が好きで好きで仕方ないんだ。
一馬を裏切ってまでもわたしは哲也を選んだけれど、この選択肢はわたしにとって間違いだったのかもしれない。
一馬の気持ちを拭ってあげられる器があったのなら、わたしと哲也の関係も違ったのかもしれない。
今こうして哲也の側にいれることが、わたしにとってのたった一つの奇跡なのかもしれない。
最終的にノリを選ぶんだろう哲也を、わたしは好きで好きで仕方がない。
一馬を好きでいれたら楽だったのに。
直人の気持ちに答えられたなら楽だったのに。
どうしようもなく哲也だけが好きな自分が嫌にもなって。
哲也以外を好きになれない自分が嫌い。
それなのに哲也はわたしを1番に見てくれなくて…
それでもいいと思ってしまう自分もいて…
どうしようもない。
いっそ、哲也がわたしを嫌いって言ってくれたならいいのに。
ねぇ、哲也…
このキスは、ノリを想ってのキスなの?
わたしにノリを重ねているの?
聞けるわけのない、わたしの大きな独り言。
「離さねぇぞ俺は」
唇を離した哲也の言葉に、涙が出そうになった。
でも同時に感じる哲也の気持ち。
やっぱりわたしのこと、分かっている。
『離れないもん…』
でも、そう言って哲也に抱き着くわたしの覚悟は決まっている。
昨日の奈々と同じ。
奈々を一人にはしないんだ。