■ 決意3


「騒ぐなよ」


そう言って走り出す哲也のバイクを見送ったわたしは、ゆっくりとそこに向かった。


―――――――――…


さかのぼること、数分前…

奈々の送り迎えをしているケンチが血相変えて青倉庫に来た時、運よくVIP部屋にノリはいなくて。

タカヒロの元に話しにいったケンチ。

一人じゃ入れないからって、わたしを連れてVIPに入ったケンチが出した言葉に、わたしは昨日の奈々の顔を思い出した。


「奈々が…いなくなりました。すいません…」


最初は意味が分からなくて…

キョトンとしてるわたしの隣にいた哲也が、わたしを引き寄せて抱きしめた。


「んだと?」


ほとんど見ることのない、タカヒロの怒った顔と声。

書き置きっぽい紙をケンチの手から剥ぎ取ったタカヒロは、側にあったソファーを右足で蹴りつけた。

その場で土下座をするケンチの背中に足をかけて紙をジッと見つめるタカヒロに、愛はないと言える?

そんなに怒り狂う程奈々が心配なら、ちゃんと守ってよ!!

奈々を受け止めてよ!!


――――でも、わたしのせい。


こうして奈々がわたし達の前から姿を消した理由があるというのなら、それはタカヒロでもケンチでもない、

わたしのせい。

わたしが哲也を想って泣いたりしたから、奈々を傷つけた。

そうやって、奈々に責任を押し付けたんだ。

どうしてあの時気づいてあげられなかったんだろう…

自分を責めてる奈々の瞳に、わたしが気づいていたのなら…


『奈々、わたしのせいだ…哲也、離してっ!』


力じゃとうてい哲也になんか敵うはずないのに、わたしは抱きしめられてる腕の中で精一杯の抵抗を見せる。


「ちげぇ!ゆきみのせいじゃねえっ!!」


耳元でそう哲也が言っても、わたしはそんな声なんか聞き入れられない。

初めてだったのに。

初めて出来た友達だったのに。

奈々しかいないのに。

お願い、戻ってきて!

わたしの所に返して!



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