■ 違和感6
ガシャンッ!
え、なにっ?
馬鹿でかい騒音に視線が飛ぶ。
何かが落っこちてきたようなその音は、VIP部屋への出入口に繋がるドアの外、ノリがバイクを倒した音だった。
一瞬にして青倉庫内に沈黙が流れる。
『タカヒロ呼んできてよ!毎日毎日何なのよ?何で毎日あんたなのよっ!?』
「すいません…」
どうしていいか分からない下っ端がノリに頭を下げてるだけで。
騒ぎを嗅ぎつけたんだろう哲也くんが、バーの入り口から出てきた。
少し肩を揺らす哲也くんは、走ってきたんだって。
そんなにまでしてノリを守りたいんだろうか、哲也くんは…
「ノリちゃん?」
『タカヒロなんでいないの?哲也、タカヒロは?』
哲也くんの腕にしがみつくみたいにそう喚くノリはとても滑稽で、でもその想いは痛い程分かる。
気持ちが溢れて抑えきれないのはあたしも同じだから。
「ノリちゃん落ち着けよ!俺が送ってくから。おいバイク貸せ」
泣きじゃくるノリを宥めるように、哲也くんが抱き抱えるようにしてノリをバイクに乗せた。
ヴォーンって音と同時に動き出すバイクの音に、被さるように開いた出入口には、小さくなるバイクを見つめるゆきみがいた。
完全にバイクが見えなくなると、ゆきみがその場に泣き崩れた。
あたしはケンチにメットを渡してゆきみの所に走った。
『ゆきみ!』
あたしの声に顔を上げたゆきみは、真っ赤な目で泣いていて、あたしはそんなゆきみをギュッて抱きしめることしか出来なかった。
あたしのせいで、みんなに迷惑がかかってる。
自分が嫌になった。