■ 違和感4


『もう!わたしタカヒロに用事あったの』


そう言うとタカヒロがゆっくりわたしに近寄った。


「どうしたの?」


相変わらず優しい口調のタカヒロは、わたしが持ってきたアイスをしっかりと加えていて。

ノリと哲也を二人きりにしたくはないけれど…


『二人で話したい』


そう言うとタカヒロの視線が哲也に移ってすぐに戻ってきた。

わたしの肩に手をかけてVIP部屋から出る。

哲也は何も言わない。

そんなことすら少し寂しく感じた。


『奈々…最近どう?』


ジッと見つめた。

タカヒロの行動に嘘はないと思うけど、真実を隠す事もあるから。

だからその違和感ある一瞬を見逃さないように、わたしは瞬きもしないでタカヒロを見つめた。


「落ち着いてるよ」


ほんの一瞬、見逃したくなる程一瞬だけどタカヒロの瞳孔が開いた気がして。

何か隠してる絶対!!


『ちゃんと教えてタカヒロ!』


ギュッて俯いたままタカヒロの手を握るわたし。

本来なら奈々本人に聞くべきことなのかもしれないのに、どうしてかわたしは奈々に何も聞けなかった。

ケンチがひと時も離れないで奈々の側にいるからなのか?

その理由はわたしにも分からないんだけど。

こうしてタカヒロに聞くこと自体、間違っているのかもしれない。

そんなことを思い浮かべていたわたしに、少しの沈黙の後タカヒロが口にした事実、それは…

―――とても悲しいものだった。


―――――――――――…



『ゆきみのことが好きなの?』

「…ノリちゃん?」

『哲也は今もあたしを好きだって思ってたんだけど』

「………」

『哲也まであたしから離れたら…寂しいよ…一人にしないって約束…守ってよ…』

















「…あぁ」




―――――――――――…


ねぇ、奈々…

奈々を苦しめてるのはわたしなのかもしれないね。


―――――――――――…



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