■ 違和感3
コンコン…
VIPのドアを開けると哲也がDVDに夢中になっていて、そんな哲也に後ろからピタって頬にアイスをくっつけた。
「うお゛っ!」
ソファーに寝転ぶようにダランてわたしを見上げる哲也にアイスを差し出した。
『お土産』
「ここに座れ」
ちょっと怒ったような表情のまま、腕を引っ張られてわたしは哲也の隣に座った。
「吃驚させやがって」
ガッツリ哲也に腕を固定されたわたしに、ゆっくりと哲也の顔が近づいて…
『哲也…?』
「目閉じろ…」
心臓がキュンてして、ここに来た理由さえも忘れそうになる…
重なる哲也の温もりに頭の中が真っ白になって…
遠慮なく侵入してくる熱い哲也の舌に翻弄されてゆく…
当たり前にキスなんて哲也が初めてのわたしは、されるがまま何もできなくて…
唇が離れるとちょっとだけ笑う哲也。
「可愛い」
そう言って又甘えた哲也の顔…
チュッて触れるだけのキスだけでもう、わたしの頭はいっぱいいっぱいで…
そんなわたしの気持ちはお構いなしにキスを繰り返す哲也は…
どこかでわたしとノリを重ねているんだろうか…
「…やめた」
不意に哲也がわたしから離れてそう呟いた。
なんで?って聞くのも恥ずかしくて、ただわたしは視線を哲也に向けた。
哲也と同じ色のわたしの赤い髪をサラッてすくった哲也は、わたしから目を逸らす。
「止まんねぇーし」
そう一言呟いた。
そのまま何事もなかったかのよう、わたしが持ってきたちょっと溶けはじめたアイスを食べる。
ハッとしてわたしがソファーの後ろを振り返ると、ニッコリ笑顔のタカヒロと、後ろにノリがいて。
一気に顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなった。
悔しいから、ちょっと悔しいから全く気にしてないって顔の哲也の太股を抓ってみた。
「痛てぇぞ、なんだ」
『よくも…』
プルプルしているわたしの首に腕をかけて「足りねぇの?」からかうようにそう言われた。
ノリは複雑そうな顔で。
哲也に向かってそんな顔をするノリすら、わたしには嫌だった。