■ 違和感2
『ありがとう』
「妬ける〜」
唇を尖んがらせてそう笑う直人。
直人はあの日以来、気持ちを閉じ込めなくなった。
でも実際には閉じ込めてるわけで、わたしを友達として接してくれてるのが分かる。
哲也と少しでも揉めてると直人は悲しそうな顔をするから、直人の前では出さないようにしてる。
『奈々、タカヒロが好きなのって何?』
哲也に買ってくと必然的にあの二人にも買ってくことになるわけで、ケンチと直人がバイク雑誌に夢中なのをいいことにわたしはこっそり奈々にそう聞いた。
『え、分かんない』
即答だった。
それは本当に分からないって顔で、むしろ言ったわたしが変な質問した?って気分になるほど。
『え、朝ご飯一緒に食べてるんでしょ?』
だから何等意味もなくそう聞いた。
奈々の目はグルンと泳いでケンチを見ていて…
『…うん、でもアイスは食べないから』
迷いながらそう続けた。
何かがおかしい。
『そうだよね、ごめん』
そう言うしか言葉が見つからなくて…
そのままコンビニを出て直人のバイクの後ろに乗った。
「奈々、荷物貸せ」
『うん』
何気ない会話だったけど、さりげない言葉だったけれど、気付いてしまったのはわたしだけ…?
奈々が誰をどう思おうと奈々の自由なんだけど。
そもそも奈々の気持ちをわたしが聞いたわけでもないし。
でも、ごく自然に”奈々”って呼んだケンチに、違和感を感じてならないんだ。
『直人、早く』
奈々とケンチの微妙な関係を、受け止められなくて…。
ケンチが奈々を好きなのかな?
っていうのは薄々感じていたけれど。
その想いに奈々が応えることはないって思っていたし。
別に二人が付き合っているわけでも何でもないのに、変な気持ちになった。
だからなのか、わたしは哲也に逢いたくて直人の背中に強くしがみついた。
それをサインに直人は必ずスピードをあげる。
わたしをよく理解してくれている、わたしの直人。