■ 過去の過ち4


【side 奈々】



タカヒロに抱きしめられて物凄い勢いであたしの心拍数が上昇する。

甘い香りがあたしの脳を刺激するようにタカヒロの背中に腕を回した。

抱きしめられるのと、抱き合うのとじゃ全然違くて…

恥ずかしいくらいの密着感に小さく溜息を漏らした。


「奈々?」


ほんの少し腕を緩めて後頭部にあったタカヒロの指があたしの髪をすくった。

離れたくないけど、これ以上こうしてるのはキツイ。

あたしの中のタカヒロへの想いが止まらなくなってしまいそうで…

あたしが想っているタカヒロは


―――あたしのタカヒロじゃない。



どんなに想いを募らせた所で叶うことはないんだ。

それを忘れちゃいけない。

だから――――


『もう大丈夫だよ有難う』


スッとタカヒロの胸を両手で押して少し離れた。


「奈々?」


怪訝な顔であたしを見つめるタカヒロはノリのもので…

分かっていても辛いものがある。


『あたしのことなんかほっといてくれていいのに…』


こんなことが言いたいわけじゃないって分かってる。

でも素直になったらタカヒロを困らせるだけだってそれも分かっている。

あたしの気持ちはどこにいけばいいの?


「奈々どうした」


タカヒロの言葉にあたしは無言で首を振った。

そんなあたしの無言に納得のいくわけもないタカヒロの表情に、それでも虚しさだけが異様に沸き上がってきて…



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