■ 過去の過ち3


一真が引っ越した時、”ゆきみを守る為に強くなる”ってそう約束をしたらしい哲也達。

でもいつしかそれは暴走族っていうチームに入ることで、お互いの存在を大きくしていった。

一真は元々リーダータイプで人気者だったから、ちょっと声かけしたらすぐに人は集まった。

哲也のパパとママは双子がいつでも会えるようにってそんなに遠くに行かなかったけど、それすら誤算だったのかもしれない。

タカヒロが八代目になってからは哲也の存在も大きく知れ渡り、いつしかそれは兄弟の力くらべのように競い合うようになっていった。

止まる術を知らないその争いは、”ゆきみの気持ち”を無視して大きくなり続けた。


「親父についていったのが哲也だったら…そう思うとやりきれねぇ。俺が側でお前を守ってやりたかったんだ」


そう言う一真の声はひどく切なくて、胸が痛い。


「でも今更もうどうにもなんねぇ。俺はoneで一真はZEROだ。…ゆきみは渡さねぇ、それが俺の答えだ」


まだ話しの途中って分かっているけど、哲也にこれ以上話す気はないらしい。

煙草を床に落として足で踏み付けると、わたしを掴む腕に力を込めた。


『一真…』


振り返った一真は俯いていて、わたしは哲也の側を離れようとはこれっぽっちも思わないけど、一真を見捨てることもしたくなくて。


「待てよ」


一真が哲也と繋がっていない方のわたしの手を握った。


「どんなに足掻いても答えは変わらねぇよ」

「行くなよ、ゆきみ」


冷たい哲也の声の後に、切ない一真の声がわたしに届いた。


『一真わたし…』


そう言って言葉を止めた。

今更わたしは一真に何を言える?

一真を苦しめて傷つけた事実は変わらない。

わたしの気持ちが哲也から一真に移ることもなくて…

その場凌(しの)ぎの慰めなんて、余計に一真を傷つけるだけなのに。


「………」


そんなわたしの気持ちを読むように、一真は何も言わない。

言わない変わりに見つめる視線は、とても切ないんだ。

静かな沈黙は哲也の足音が掻き消して、たった一つの白いドアが閉まるともう何も聞こえない。

一真の声がもう届かない。



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