■ 過去の過ち2


『側にいないならもういらない…わたしの人生哲也で始まって哲也で終わりたい。哲也さえいれば、何もいらない』

「なんだよそれ…」

『哲也が、好きだよ』


そう言ったわたしの言葉に一真はもう何も言わなかった。


気づいてた。

最初から知っていた。

一真がわたしを好きなこと。

散々一真の気持ちを利用したまま、わたしは簡単に哲也を選んだ。

遠くにいっちゃいそうな哲也を食い止めるのに必死で、一真の気持ちを踏みにじったあの日。

決して戻ることの出来ないあの日…

どんな言葉を言ったら一真はわたしを許してくれる?

どんな言葉を言っても傷は消えない。

一真を傷つけたわたしの罪は重い。



困惑する哲也はそれでもわたしを離すまいとしっかりと腕を掴んでいてくれて、哲也の温かい温もりにわたしは安心しつつも涙が止まらない。

わたしにはこんな風に哲也に守ってもらう資格なんてないのに。


「それがてめぇのやり方か?」


低い声は哲也発信で、一真を強く睨みつけている。

無言の一真に、尚も言葉を綴る哲也。


「惚れた女への愛情表現が、泣かせることかよ?」

「………」

『哲也…』


そう言おうと哲也の腕を掴んだら、グイって引き寄せられて「黙ってろ」って耳元で言われた。

ポケットから煙草を出すとカチっと火をつける音がして。

哲也の煙草の香りが部屋に充満する。

それからゆっくりと薄い唇を開いて、

それをスローモーションみたいに眺めていたわたしの瞳に…


「全部知ってる」


そう呟いたんだ。

わたしに向けただろうその言葉に顔を上げる。

わたしをしっかり見つめる哲也と視線がぶつかって。


「一真がZEROを始めたのはゆきみのせいじゃねぇ」


思いも寄らぬ哲也の言葉に、わたしは流れ出ていた涙さえ止まりかけている。

黙ってろと言われた手前、哲也を見つめる事しか出来なくて…


「ゆきみを縛ってんのは、…俺の方だよ」


そう呟いた哲也の声は微かに震えているようだった。



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