■ 壊れたハートと悲しい恋の始まり4
だったらどうしてノリを狙わないんだろう?
あたしを狙ってタカヒロがここに来るかどうかなんて分からないだろうし、総長自らくるのかはあたしだって分からない。
チームの総長が動くだけで、簡単に言えばそのチーム自体が動くことに成り兼ねない。
そうなるともう、何人の人がどうなるのかって考えるだけでちょっと恐ろしい。
だから単独であたしを守ってくれているタカヒロは、哲也くんとゆきみにしかその事実を明かしていないんだって。
『こんなことして、何になるの?こんな子供みたいなこと…』
パーンッ!!
当たり前みたいに飛んでくる平手打ち。
それでもタカヒロの温もりはあたしを守ってくれている気がして、前だったら怖いと思うだろうこんな状況さえも冷静を保てていた。
少なからずチームoneに入った事であたし自身の環境が変わったのは違いない。
ゆきみという存在が
タカヒロという存在が
あたしを強く変えていくんだ。
「二度はねぇって言ったはずだ」
一つしかないドアが開くのと同時に聞こえたその声に、あたしはこんなにも安心出来るものかって思う。
総長自ら来たりしたらチームに迷惑がかかっちゃうのに…
ケンチや哲也くんに頼んでくれたらよかったのに…
タカヒロが来てくれたことが、こんなにも嬉しいなんて…
ゆきみの所じゃなくて、あたしの所に来てくれたことがこんなにも嬉しいなんて…
たったそれだけ。
『なんでこんな奴の為にチーム動かすのよっ?』
興奮気味に大声を出すそいつ等を、タカヒロは冷めた目で睨むと怯んで口を噤んだ。
でも、この期に及んであたしはその理由を聞きたいと思っていた。
確信的な言葉を聞きたいと願っている自分がいる。
「聞きたいか?」
それは明らかにあたしに向けられたんだろう、タカヒロの言葉。
ここであたしが『YES』と言ったならタカヒロはきっと確信を言ってくれる。
だからあたしは首を横に振った。
出来るなら、あたしだけが知りたいから。