■ 壊れたハートと悲しい恋の始まり3


【side 奈々】



『本当ムカツク!』


そう言いながらあたしを舐めるように見ている女子達。

その手には煙草を持っていて、白く濁った煙りをあたしの顔にかかるようにフーっと吐き出した。

殺意が芽生えそうなその行為に、あたしは下唇をこれでもかってくらい噛み締める。


『汚い』


一言そう呟いたら、案の定平手打ちをされた。

赤くなっているだろう頬がジンジンして自然と涙目になる。


『知ってた?あたしらの総長の一真さん…そっちの哲也と双子だってこと…』

『え…』


一瞬聞き逃してしまいそうだったその言葉。

すぐに、続く言葉が飛んできて。


『あんたのお友達さぁ、哲也哲也って言ってるみたいだけど、うちの一真さんとも繋がってんだよ?』


ゆきみを侮辱されることが、こんなにも腹がたつなんて。


『ゆきみの悪口言うなっ!』


お腹の底から沸き上がる怒りに出した声が、震えていたのが自分でも分かる。

哲也くんが双子なんて事実は知らないけど、ゆきみはそんなことする子じゃないって信じてる。

あの日あたしに話してくれた哲也くんへの想いに嘘はないって、その気持ちは間違いなんかじゃないってそれくらいは分かる。

一緒にいるゆきみを見ているだけで、哲也くんを好きなんだってそんなのあたしじゃなくても分かる。

そんな軽々しい想いじゃない、他人に口出しされるような安っぽい気持ちじゃないって、思った。


『聞かされてないんだ、あんた。可哀相に…』


見下すような、馬鹿にした笑いを顔に浮かべてあたしを笑う女子達が、心から憎いって感じる。


『真実はゆきみからちゃんと聞いてる』


そう言ったあたしに『へぇ〜』って、やっぱり馬鹿にした笑いが返ってくる。


『まぁどーだっていいけどさ、oneの女はゆきみにしろあんたにしろ、男に取り繕うのがうまいんだね〜…あんた、タカヒロにどう取り繕ろったんだよ?』


それは今まで見えもしなかった殺気を感じて、この人達は彼氏に色目を使った云々じゃなくて、最初からタカヒロが目的だったんじゃないかって思える程だった。



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